色彩から読み解く「源氏物語」

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内容紹介

〈紫式部は色に何を託したのだろう?〉

 ◉最愛の女、紫の上は赤紫と紅。
 ◉ひと夏の恋の相手、夕顔はラベンダー色。
 ◉よき相談相手、花散里は露草の青。
 ◉出家をした藤壺、空蟬は墨のようなグレーの鈍色(にびいろ)。

稀代の色彩コンダクター・紫式部が『源氏物語』に織り込んだ「色の謎」を読み解く!


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〈「紫のゆかりの物語」は色の玉手箱〉

萌黄色(もえぎいろ)、桜色、茜色(あかねいろ)、菫色(すみれいろ)、桔梗色(ききょういろ)……。
平安時代、貴族たちは衣装を自生の植物で染め上げ、それらをいくえにも重ねて身に纏っていた。

その色のコーディネートは「重ね色目」と呼ばれ、桜重ね、紅梅重ね、柳重ね、蟬の羽重ね、紅葉重ね、雪の下重ね……四季折々の美しさに富んだ名を持つ。
それらを今に伝えるのが「源氏物語」だ。

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〈『源氏物語』はビジュアル小説〉

物語は、登場人物たちのきらびやかな衣装、交わされる文、華やかな年中行事など、色彩に溢れている。
女房として宮廷に仕えた紫式部は、確かな観察眼と天才的な色彩感覚で、それらの色に女性たちの喜びや悲しみ、嫉妬、生きづらさを託している。

本書は、紫式部が物語に織り込んだ色を、色彩学や心理学の観点から読み解き、1000年前の女性たちの実像に迫る。

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【目次】
一.『源氏物語』は色彩溢れるビジュアル小説
 ●紫式部は女君たちの衣装の色を意図的に描き分けている
 ●日本の伝統色の約七割は平安時代に作られた
 ●美しすぎる、光源氏の「桜重ね」
 ●チャームポイントは、襟元や袖口から覗く配色
 ●貴族社会における「禁色」というタブー
 ●鮮やか、艶やか! 驚きの『源氏物語』の色
 ●季節の移ろいに心を重ねた王朝人の美意識

二.衣装の色が物語る、女君たちの愛と人生
 ●「紫のゆかりの物語」のはじまり
 ●光君に残された空蟬の薄衣はなに色だったか?
 ●夕顔の花から始まった、ひと夏のはかない恋
 ●『源氏物語』の時代、男たちはどんな色を着ていたのか?
 ●年齢とともに変化する紫の上のシンボルカラー
 ●色のない女性たち、葵の上と六条御息所
 ●おかしくて、やがて哀しい、末摘花の赤
 ●緑が象徴する明石の上のセルフコントロール力
 ●花散里が染める露草の青
 ●源氏をふった玉鬘の山吹重ね
 ●可憐なピンクをまとう女三宮の秘密
 ●天才的な色彩演出家、紫式部

三.王朝文化を生んだ貴族たちの恋愛事情
 ●平安時代は、本当に一夫多妻制だった?
 ●待つ女・愛人たちの焦燥と嫉妬
 ●色彩が重要な役割を果たしたファーストコンタクト
 ●女房たちの心をわしづかみにしたラブレターの色は?
 ●色、香り、歌……王朝人が好む“ほのかな美”
 ●宮廷を彩るマスコット、女童たちの装い
 ●平安貴族はどのように喜怒哀楽を表現していたか
 ●心の深層へとつながる絵、音楽、夢

四.色で辿る登場人物たちのその後
 ●女君たちのシンボルカラーが勢ぞろいした六条院のイベント
 ●源氏をめぐる女性たち、それぞれの後半生──明石の上、末摘花、玉鬘……
 ●成長しない姫君の変貌──女三宮
 ●源氏にもっとも愛された女性の幸と不幸──紫の上
 ●鈍色に見る、「出家」という解放
 ●光源氏、最後の一年
 ●色彩から見えた、紫式部の密かな企み

五 紫式部からの問いかけは、千年の時を超え
 ●紫式部はなぜ色彩美あふれる物語を書けたのか
 ●紫式部の前半生──孤独な少女からシングルマザー、作家へ
 ●紫式部の後半生──道長とのウィンウィンな関係
 ●清少納言『枕草子』は輝いていた後宮へのオマージュ
 ●日向よりも陰に目がいく『紫式部日記』の憂鬱
 ●「宇治十帖」で示された女性たちの新たな選択
 ●色彩に託された紫式部のメッセージ

あとがき
参考文献

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(四六判並製/256頁)

 

著者紹介

江崎 泰子(えざき・やすこ)
長年、編集者として雑誌や単行本の企画・制作に携わった後、1988年、末永蒼生とともに(株)ハート&カラーを設立。色彩心理とアートセラピーの専門講座「色彩学校」の運営や講師を行うかたわら、色彩関係の出版企画、カラーデザインの仕事なども手がける。
色彩の中でもとくに日本の伝統色に関心が高く、着物や歌舞伎、浮世絵などの日本文化を色彩を通して研究。平安の色に関しては、染織家・吉岡幸雄、装束研究家で作家・近藤富枝、『源氏物語』研究家・潮崎晴などに師事。『源氏物語』から江戸の流行色まで、色彩心理の視点も交え、その魅力を伝えている。
末永との共著に『色彩学校へようこそ』(晶文社)、『色彩記憶──色をめぐる心の旅』(PHP研究所)、『色から読みとく絵画──画家たちのアートセラピー』(亜紀書房)などがある。

 

発売日

2024年6月17日