内容紹介
妖怪は私たちのうしろめたさの影なのか?
民俗学の祖である柳田国男の『遠野物語』『妖怪談義』『山の人生』を繙くと、日本列島は大地震だけでなく、飢饉、鉄砲水、旱魃など、始終災害に見舞われていたようだ。河童、座敷童、天狗、海坊主、大鯰、ダイダラ坊……の妖怪たちは、災害の前触れ、あるいは警告を鳴らす存在として、常に私たちの傍らにいた。
安政の大地震などは古文書も記録がなされているが、毎年、そこかしこで起こる災害の記録は、おどろおどろしい妖怪に仮託され、人々の間に受け継がれてきたのだ。
著者は、遠野、志木、生まれ故郷の辻川(兵庫)、東京の代田などをたどり直し、各地に残る祭りや風習などを取材しながら、ほそぼそと残る「災害伝承」民俗的叡智を明らかにする。自然への畏怖、親しい人の喪失、生き残ってしまったうしろめたさ、言葉にならない悲しみと妖怪たちからのメッセージに耳を傾けてみよう。
〈もくじ〉
序
一 河童は死にかかわるものである事
二 天狗が厄を祓うと今でも信ぜられている事
三 やろか水や白髪水を人びとは怖れたという事
四 鯨や狼が江戸の世にもてはやされた事
五 一つ目の巨人がこの列島を跋扈したという事
おわりに
(四六判上製/236頁)
発売日
2012年7月23日