歴史がおわるまえに

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内容紹介

歴史は「私たちの進路」を、もう照らさない。
虚心に過去を省みれば、よりよい政治や外国との関係を築けるはず――そうした「幻想」は、どのように壊れていったか。東京五輪や三島事件にまで遡り、安倍長期政権やトランプ登場をもたらした「もう歴史に学ばない社会」の形成をたどる。

1995年の戦後50周年や、2011年の震災と原発事故のとき、「歴史に学ぶ」ことの大切さを多くの人が語った。しかしその後に来たのは、歴史修正主義の台頭、脱原発ブームの収束、新党バブルの崩壊、過去を無視する大国の指導者の登場……。どうしてこんなことに?
往年の偉人ですら「キャラ」になり、国民が共有できる「物語」はすっかり消えたいま、私たちに「歴史」は必要なのだろうか?

【目次】
はじめに―偶然にたどりつくまで
1 日本史を語りなおす――史論
書き直される日本中世史
――義経・後醍醐・信長の実像 呉座勇一+與那覇潤
儒学者たちの明治維新
――ひっくり返った江戸の「スクールカースト」 河野有理+與那覇潤
すべては「崩壊」から始まった
――日本人の「美と国民性」の源流 福嶋亮大+與那覇潤
歴史学に何が可能か
――「中国化」と「江湖」の交点 東島誠+與那覇潤

2 眼前の潮流をよむ――時評
二〇一二年は“政治”の年だった!?
――書棚の民主主義論 仲正昌樹+與那覇潤
橋下徹 淋しき「戦後民主主義」の自画像
日本政治の「中国化」
――揺らぐ議会制民主主義
解釈改憲と「戦後」の終わり
―― 『美しい国へ』と『日本改造計画』 宇野常寛+與那覇潤
補助輪付きだった戦後民主主義
――ヤンキーと国家 斎藤環+與那覇潤

3 現代の原点をさがして――戦後再訪
一九六八年からの置手紙
――篠原一『日本の政治風土』
交錯する南北朝史
――網野善彦と山本七平
一九七〇年代試論
――「遅れてきた戦中派」の登場
ふたつの「中国化論」
――江藤淳と山本七平
戦中派の退場

 4 歴史がおわったあとに――現在
歴史学者廃業記
――歴史喪失の時代
偶然性と代理
――歴史の不在を生きる技法とは
歴史なき世界のはじまり
――凡庸な独裁者たちの肖像


(四六判並製/392頁)

 

著者紹介

與那覇潤(よなは・じゅん)
1979年生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は日本近現代史。2007年から15年にかけて地方公立大学准教授として教鞭をとり、重度のうつによる休職をへて17年離職。歴史学者としての業績に『翻訳の政治学』(岩波書店)、『帝国の残影』(NTT出版)。在職時の講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。共著多数。
2018年に病気の体験を踏まえて現代の反知性主義に新たな光をあてた『知性は死なない』(文藝春秋)を発表し、執筆活動を再開。本書の姉妹編として、学者時代の研究論文を集めた『荒れ野の六十年』(勉誠出版)が近刊予定。

 

発売日

 2019年9月14日