内容紹介
世界に可能性はまだあるのか、「芸術」はその問いに答える方法である。
時を超えて交錯する思考の運動が、星座のように明晰なる一つの図形となって、新たな知覚と認識を導く。
稀代の批評家・造形作家による美術史の解体=再構築。デビュー以来紡いできた膨大な批評文を精選した、その思想の精髄。シリーズ第1弾。
「感覚と存在、感覚と真理(イデア)を分けるという誤った図式があります。存在や真理は認識であり物質ではない。感覚は(物質によって起こされる事実であり、つまり)物質です。存在や真理を食べることはできません。食べることができるのはむしろ感覚です。林檎を食べているのではない。セザンヌがそう考えたように、赤という感覚こそを私たちは食べているのです。だから決して林檎は知恵の実ではない。林檎とは無数の感覚が作り出す、いわば星座なのです。音楽は星座です。絵画とは星座です。それは無数の感覚のさまざまな方向への運動、物質的な運動の交錯が作り出す編成体です」(本書より)
【目次】
Ⅰ 捲土重来――再開する時間
ふたたび、うまれる
墓は語るか(墓とは何か)。
墓は語るか
歴史とよばれる絵画
知覚のバリケード
捲土重来――再起する絵画(絵画の変容そして勝利)
あふるるもの
聴こえない旋律を聴く
Ⅱ 天体は抵抗する――確率論的抵抗
天体は抵抗する
確率論的主体性(放射能的アソシエーション)
理性の有効期限――理性批判としての反原発
国家というタブロー――マネ《マクシミリアンの処刑》をめぐって
Ⅲ 感覚のエデン――約束としての了解可能性
芸術教育とは何か?──教育と芸術そして科学
準備と注解
火星の住民と地球の芸術家
ルールはいつでも、「世界に一つしか存在しない具体的事物」として現れる。
メルヒエン クリティック――アリにもハナにも心があり、言葉がある
魚の教え――ΙΧΘΥΣ
感覚のエデン――蛇に学ぶ
ウナギイヌという官能について
詩という認識
(言葉の真理あるいは)言葉の心と理――藤富保男『詩の窓』に寄せて
トリシャ・ブラウン――思考というモーション
運動イメージの構造的な把握に向けて
人間はロボットによって創造される――芸術を通したロボットの定義。あるいはロボットを通した芸術および人間の定義
生きたアーカイブ――LIVING BETWEEN DIVERSITY OF TIME
8ミリ映画《回想のヴィトゲンシュタイン》への想起(その一つ)
Ⅳ 経験のインフラストラクチャー
霧の抵抗
見ることの経験
あとがき
図版出典・引用一覧
(A5判上製/488頁)