内容紹介
《100年の時をかけて、私たちはついにブラックホールを「見た」》
2019年4月、ブラックホールの存在が初めて画像で直接証明された。
「いくら見つめても足りない。素晴らしく新しいが、なぜか懐かしい」プロジェクト実現のため、世界中の電波望遠鏡のネットワーク作りに奔走した研究者が語る、壮大なサイエンスノンフィクション。
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宇宙の巨大な怪物、ブラックホール。
そこでは光が消え、時間が止まる。
私たちは、知識の限界を覗き込もうとしているのだろうか――暗闇の中の光はささやく。いまだ謎に満ちあふれたこの世界の物語を。その中で、私たち一人ひとりはどのようにして在るのかを。
私たちの限界が、私たちを探究者たらしめる。
千年にわたる旅の末に得られた、一枚の画像についての物語。
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もしかすると私は「私の」ブラックホールを見ることができるかもしれない。そして、私だけではない――誰もがそれを見ることができるだろう! こう気づいたとき、私は雷に打たれたような感覚に襲われた。私の心の目には、具体的なイメージが浮かび上がってきた。今や私には明確な目標ができた。
ブラックホールの喉の奥底を覗いてやるのだ!
私はそわそわしてきて、立ち上がり、歩き回り始めた。(本文より)
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(四六判上製/480頁)
著者・訳者紹介
ハイノー・ファルケ(HEINO FALCKE)
1966年ドイツのケルンに生まれる。オランダのナイメーヘンのラドバウド大学教授を務める、多くの勲章を授与された宇宙物理学者。2011年、オランダの科学技術者に贈られる最高の賞であるスピノザ賞を受賞。2021年には、天文学者ヘンリー・ドレイパーの名を冠したヘンリー・ドレイパー賞を全米科学アカデミーより贈られる。いずれのもブラックホールの画像を捉えようという着想に対する賞である。その画期的な取り組みは、彼が指導的な役割を果たしたイベント・ホライズン・テレスコープという国際的なプロジェクトによって達成された。
イェルク・レーマー(JÖRG RÖMER)
1974年生まれ。ドイツのハンブルクで、スペイン侵略以前の中米の文明であるメソアメリカ文明、先史学及び古代史、ラテンアメリカ研究を学ぶ。現在はドイツの『デア・シュピーゲル』誌の科学記事編集者。
吉田 三知世(よしだ・みちよ)
英日・日英の翻訳者。京都府生まれ。京都大学理学部卒業後、技術系企業での勤務を経て翻訳者となる。訳書に、フランク・ウィルチェック『物質のすべては光』、ランドール・マンロー『ホワット・イフ?』(以上、早川書房)、レオン・レーダーマン『詩人のための量子力学』(白揚社)、アダム・ベッカー『実在とは何か』(筑摩書房)、ケイティ・マック『宇宙の終わりに何が起こるのか』(講談社)、ザビーネ・ホッセンフェルダー『数学に魅せられて、科学を見失う』(みすず書房)などがある。訳書のジョージ・ダイソン『チューリングの大聖堂』(早川書房)が第49回日本翻訳出版文化賞を受賞。
発売日
2022年9月6日